新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策:法律事務所における緊急事態宣言後の状況と今後の施策 相続版
こんにちは、船井総合研究所の鈴木ゆたかです。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの事務所様が直近の所内体制やマーケティング計画の変更を迫られ、さらに事務所経営における価値観を変えられる代表もいらっしゃるかと思います。
今回のコラムでは、法律事務所における緊急事態宣言後の状況と、相続分野における今後取るべき施策についてお伝えさせていただきます。新型コロナウイルス騒動が収まったとしても、もう2020年1月のようなコロナ以前に戻ることはあり得ません。コラムを通じて今後の時流を捉えるヒントをお伝えできればと思います。(4月30日時点)
目次
■相続分野の現状と展望
相続事件(相続発生前・後)全体の問合せ・受任数などについては、都内周辺を除き3月末~4月上旬までほとんど影響がありませんでしたが、4月16日に全国に緊急事態宣言が発布された以降は好調時と比較し3割減程度の集客数になっている傾向です。
一方で、相続発生前の相談においては、有名芸能人が亡くなったことで「遺言」へのニーズが顕在化され、相談に至るケースが増加傾向となっています。
全体的に相続分野は依頼者の年齢層が高いこともあり、WEB面談(オンライン相談)を導入しても軽微な相談は来ることなく、どうしても相談したい受任率の高い依頼者であるといえます。
まだWEB面談の準備ができていない事務所様は、このタイミングで必ず導入すべきですので、ご準備ください。
また、調停段階の事件が多い事務所では事件滞留につながっています。コロナによる外出自粛や流行の第二波、第三波が来ると想定されているなかで、今回の緊急事態宣言解除以降も裁判所が止まるリスクはゼロではありませんので、今後の紛争事件については、できるだけ調停に移行させない事件解決を目指していただきたいです。
■今後、法律事務所としてすべきこと
新型コロナウイルス感染症の状況は日々変化しており、迅速かつ柔軟にニーズに合わせて対応する必要があります。
以下、3つのフェーズに分けて相続を注力したい法律事務所に実践していただきたいことをお伝えいたします。※相続分野に絞った記載をしておりますので、所内体制やデジタルシフトについて知りたい方はその他のレポートをご覧ください。
・今後1か月
緊急事態宣言の延長が濃厚となっておりますので、6月初旬まではこの状況が継続されるものと想定できます。前掲の内容と重複いたしますが、WEB面談の導入はマストで行っていただきたいと思います。
さらに今後1年以上外出への忌避感は避けられませんので、オンライン決済をご検討いただき、法律事務所でなかなか進んでいなかった、キャッシュレス化へ前向きに取り組んだいただきたいと思います。
また、緊急事態宣言後は分野かかわらず事務所への問い合わせが増加されると想定されますので、できるだけ既存事件の解決、準備等にお時間を使ってください。
・今後1~3か月
緊急事態宣言後となりますが、まだ外出への抵抗感は継続されますので、戸籍の取り寄せなどの代行業務などにもニーズがあると想定されます。今までも事務所では行っていたかと思いますが、業務効率化などの内部体制が万全ではない事務所が多いため、今後出社させた最小限のスタッフで業務が回せるようにマニュアル作成などをされると良いです。
また代行業務は料金体系等も準備していない事務所が多いため、それらも表に出せるようにしていただきたいです。
紛争業務は相談できなかった分が増えると想定されるため、前述しておりますが、できるだけ調停に至らないで解決できるよう提案をしていくことが望ましいです。調停になったら、もっともめたら、次家族と会ったら(いつ会えなくなるか分かりません)などの提案ではなく、早期に弁護士が介入するメリットをお伝えしてください。
・今後3か月以降
人の行き来の制限も穏やかになると想定されますが、まだセミナー等の開催は難しい段階です。しかし少しずつ人を表立って集客することも緩和されるようになると想定されますので、紙の広告媒体を使った事務所での相談会、オンライン相談会を告知し、潜在層の掘り起こしを行うべきです。
また、今年の新人弁護士が面談の経験を補えるよう、以前から進めているマニュアル化などを事務所内へ共有し、より深めていただきたいタイミングです。2019年末に登録した先生方への教育や、先生方が1年で得られる通常業務経験は他の期と比較し減少する傾向にあるため強化していく必要があります。
■新型コロナ禍における相続分野のマーケティングについて
・相続発生後の案件について
相続発生後の案件の特徴は問題が顕在化していることであるため、集客最大化においては、WEBマーケティングが最も効果的です。調停延期やプライベートの予定が延期となり時間ができた先生はぜひこのタイミングにWEBマーケティング(原稿の執筆やコンテンツの改善など)にお時間を当てていただきたいです。
新型コロナ禍であっても相続事件はなくなることはなくなりません。そのため長期化すればするほどWEB面談の需要は高まり、WEB面談を導入できている事務所は相談が回復、ないしは以前より増加すると想定されます。WEB面談は依頼者もですが法律事務所での導入ハードルが非常に高いため、「コロナが終わるまで待とう」としている事務所は取り返せないほど遅れを取ってしまいます。繰り返しになりますが、これだけは必ず導入してください。
次にWEB面談を導入するにあたっての課題として受任率があります。
WEB面談は集客時点では見込みが高い依頼者が多いですが、提案やヒアリングを十分にできない場合は当然ですが受任率が落ちてしまうため、下記3点を意識して面談に臨む必要があります。
①ヒアリングの充実(事前にLINEやショートメッセージやメールフォームなど依頼者と接点を一番簡単に持てるものを利用し、ヒアリングを実施)
②画面共有を利用し、依頼者との認識の共有、打ち合わせ内容のメモの共有
③WEB面談システムの操作への慣れ
また、WEB面談は信頼関係を築きにくく、1回で受任に至ることが難しいことも多いため、1度で受任できない場合も、その場で2回目の面談予約を確保するようにしてください。
・相続発生前の案件について
前述しているところですが、相続発生前の案件のニーズが高まっているため遺言の相談がWEBマーケティングでも獲得できるようになっています。生前のマーケティングにおいてもサイトの強化を積極的に行っていただきたいです。
さらに自粛ムードが落ち着いたタイミングで、広報やフリーペーパー、ポスティング、折り込みチラシなどを利用し、「遺言・信託」などを訴求した相談会(事務所・オンラインどちらも)の開催をしていただきたいです。
さいごに
本コラムでは相続分野に絞って情報をお伝えしましたが、多くの事務所で様々な分野の取り扱いがあるかと存じます。この緊急時にはできるだけ多くの情報を収集していただき、事務所でできると思ったことをすぐ取り組んでいただけますと幸いです。
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