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顧客体験の提供による顧客満足度向と紹介発生の必要性

読者の皆様

いつもありがとうございます。
法律事務所向けのコンサルティングをしております吉冨です。

突然ですが、先生方の事務所が得ている反響はどのようなルートが多いでしょうか?

・ホームページ(自然検索、リスティング広告)
・ポータルサイト
・勉強会、セミナー(主催・他社主催)
・知人(過去客・他士業)からのご紹介

「弁護士白書2020年版」によると、2009年には弁護士数が26,930人だったのが、2019年には42,058人となり、10年で156%の増加となっています。
また、弁護士1人あたりの事件数の合計値(各事件の総新受任件数の合計を弁護士数の合計で除したもの)は、2009年の235,508件から減少し続け、2019年には134,934件と落ち込み続けています。

今後、供給過多の状況が続くことで、法律事務所が獲得できる反響数が減少するだけでなく、マーケティング手法も大きく変えざるを得ない状況になると言えます。

本コラムでは、2021年に船井総研が行った集計結果・分析のご紹介と、変化する市場概況において取るべき対策についてお伝えさせていただきます。

全国における過去5年間の弁護士数・法律事務所数の変遷

司法試験受験者数は年々減少傾向にあるものの、毎年約1,500人ほどの合格者数は維持しており、全国の法律事務所に所属する弁護士も当然のことながら増加を続けています。

2016年~2020年の変遷を見てみると、全国の弁護士は2016年の37,680名が2020年には42,164名となり、4,484名が増加しています(増加率111.9%)。
なお、法律事務所数は2016年の16,422件から2020年は18,305件と1,883件の増加となっています(増加率111.5%)。

まとめると、

①4,484名の弁護士登録数が増加(法律事務所は1,883件)
②弁護士数2桁増加エリアは限定的(首都圏・北陸・関西・九州の一部)
③法律事務所数2桁増加エリアは弁護士数と比較し多数(上記エリアに加え、中部および中国、沖縄)
④弁護士数は5県で減少も法律事務所数の減少は秋田県のみ

全国的に弁護士数と比べ、法律事務所数が増加。ゼロ地域はなくなり(ワン地域は北海道江差・千葉県佐原・岡山県新見の3つ)、商圏人口・弁護士会の規模に比例し数は増加。

ということになっています。

全国展開の大規模事務所とどう差別化を図るか

そのなかで、全国を中心に支店展開をしている法律事務所において、大幅な支店展開数、弁護士数の増加も見受けられました。

全国に展開し、複数の弁護士が在籍する事務所では、複数の分野に対し、リスティング広告を中心にした反響獲得を進めており、分野によってはリスティング広告の高騰が続き、小規模事務所が投資できる広告費で対抗できない状況になってきていると言えます。

なお、船井総研では商圏別・テーマ別で検索をした際のリスティング広告表示事務所の傾向を纏めさせていただきました。
2021年8月12日~18日にかけてのリサーチであり、現在では異なる結果になるかもしれませんが、ご参考にしていただけるのではないかと思います。

※大商圏(100万人以上)、中商圏(50万人~100万人)、小商圏(30~50万人)

①交通事故
全国的に広告掲載の上位は2事務所で大方占められている。弁護士KWの組み合わせで接骨院の表示も散見。ランディングページの比率としては特化サイトが多く、他分野と比べても特化サイトへのランディング比率が最も高い。

②労災
大商圏と小商圏では全国展開している特定の法律事務所の広告掲載率が高い。コーポレートサイトへのLPは少なく、特化サイトもしくは特化LPが中心。当該分野での広告掲載事務所は全国的に少数。

③離婚
大商圏では地元事務所の掲載率が高いが、小商圏は全国展開型事務所およびポータルサイトの掲載率が向上。特化サイトの比率が高いが、コーポレートサイトでの掲載も散見。

④相続
地域に関わらず、大方、法律事務所の掲載であるが、商圏関わらず、税理士・行政書士・司法書士事務所の広告掲載も散見。他の分野と比較し、特化LPサイトへのランディングが散見。

⑤遺産分割
司法書士事務所の掲載数が多く、弁護士KWの掛け合わせでも掲載。大商圏では税理士事務所の掲載もあり、競合は法律事務所のみでない。LPの多くは特化サイトであるが、コーポレートサイトでの掲載も散見。

⑥企業法務
大商圏では地元事務所の掲載率が高いが、小商圏は特定のスタートアップ系法律事務所による広告掲載率が圧倒。LPの多くは特化サイトであり、一部、ECに特化したサイトへのランディングで中商圏も網羅。

⑦法人破産
全国展開している特定の法律事務所が全国的に掲載比率が高い。いずれの事務所も媒体は特化サイトが中心。

⑧自己破産
大商圏は特定エリア展開型の法律事務所、中商圏は全国展開型の法律事務所、小商圏は特定地域の法律事務所が地域に関わらず、広告掲載の上位を占めている。

⑨刑事
大商圏は当該分野を扱っている2つの法律事務所が掲載の中心。全国的に掲載数は少なく弁護士検索サイトも表示。

「顧客体験」を生み出す必要性と取り組み

一般的に広告費率は売上の10%前後が適切だと言われますが、売上規模が大きくなればなるほど広告費も増大となるため、ことリスティング広告に関して言えば、投資できる広告費が高ければ高いほど、入札戦略を優位に進めることができ、反響獲得もし易い立場になれると言えます。

逆を言えば、小規模事務所で広告に割ける費用が捻出できない、あるいは捻出し辛い場合に、そのままWEB広告だけに頼って集客をしても、中期的且つ持続的に反響獲得をし続けることは困難だと言えるのではないでしょうか。

そのうえで、WEB広告に頼らずとも、顧客から選ばれる事務所経営を目指す取り組みが今後の事務所経営では重要となってくると言えます。
「顧客から選ばれる事務所」になるうえでは以下の3つがポイントとなります。

1.プロモーション戦略だけでは案件・顧客獲得は困難
全国展開型事務所によるWeb広告投資とプロモーションに取り組む事務所が増加。
顧客から選ばれるうえでは、顧客体験と価値創造をすることが重要であり必須に。

2.顧客目線に立ったサービスの開発と提供に活路
弁護士目線のプロダクトアウト的サービスとプロモーションは顧客ニーズから逸脱。
所員全員による顧客対応(サービス)と顧客の課題発見と解決が求められる時流。

3.CX(顧客体験)を生み出すことが新しい時代の成否
マーケティングは事務所規模(投資額)により成否が決まり分かれる時代に。
事務所規模関わらず顧客獲得をする場合はCXに取り組み紹介率を上げることが重要。

先ほど、先生方の事務所の反響獲得ルートについてお聞きしましたが、今後はWEB広告に依存せず、既存顧客をはじめとし、満足度を高め、紹介が発生する仕組みや体制を構築していくことが、持続的な事務所経営を実現するうえでは重要な取り組みになるといえます。

今後の対策のために研究会をご活用ください

今回のコラムでは、2021年8月に開催した法律事務所向け研究会合同例会で開催したレポートを一部要約してお伝えさせていただきました。

纏めると、
①弁護士数に比例し、法律事務所数が全国的に増加傾向である一方、人口減少による市場の縮小により、反響・案件の獲得は困難に。

②法律事務所の大型化と全国への支店展開により、出店エリアを中心にした広告投資額が増加傾向に。
地元の法律事務所も広告費の増額が迫られ、広告に頼るマーケティングでは利益率が下がり、安定した事務所経営が困難に。

③相談、依頼をする顧客の満足度を高め、リピート数と紹介発生数を増やす取り組みが重要に。
ビジネスマナーはもとより、顧客満足度を上げるとともに、顧客の感動を生み出す「顧客体験」という考え方を理解し、実践していくことが重要になる。

ということになります。

船井総合研究所では、全国の弁護士の先生方を対象にした研究会を複数運営しており、全国200以上の法律事務所にご参加いただいています。
上記のような分析を法律事務所専門のコンサルタントからお届けするだけでなく、全国の法律事務所で活躍されている先生方をお招きし、明日の事務所経営にお役立ていただける講座を提供しています。

事務所経営が複雑化し市場が変化するなかで、研究会は経営者の先生方が経営に専念できるためのお役立ちの場になると確信をしております。
まだ研究会にご参加いただいたことのない先生方は、初回に限り無料でご参加いただくことができますので、この機会に是非、ご参加くださいませ。

皆さまのご参加、お待ちしております。

法律事務所経営研究会お試し参加お待ちしております。

法律事務所経営研究会は、弁護士のための経営・マーケティングに関する情報提供およびスキルアップに特化した経営研究会です。2005年の発足以降、全国の法律事務所の先生方にご参加いただいています。やみくもに利益や規模の拡大を追求するのではなく、クライアントの皆様に満足していただけるサービスの発展・開発を目的としています。また、法律実務に関するスキルアップだけでなく、経営スキルを高める機会としてもご活用いただいています。

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【執筆者:士業支援部 吉冨国彦】

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